「所有者不明土地問題」を解決!令和3年改正民法の「土地利用」に関する新ルールを徹底解説!

 皆さん、不動産に関する法改正が気になっていますか? 日本全国の約2割もの土地が、所有者が不明であったり、連絡が取れない「所有者不明土地」となっている現状をご存じでしょうか。この問題は、公共事業や民間の土地取引を妨げ、放置された土地が周囲に悪影響を与えるなど、様々な課題を引き起こしています。
 この喫緊の課題を解決するため、令和3年(2021年)4月に「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立・公布され、令和5年(2023年)4月以降、新制度が順次開始されています。

 これらの法改正は、大きく分けて以下の3つの柱で構成されています。
  1.登記がされるようにするための不動産登記制度の見直し
  2.土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設
  3.土地・建物等の利用に関する民法のルールの見直し

 今回は、この3つ目の柱、「土地利用に関連する民法のルールの見直し」について、詳しくご紹介します。これらの見直しは、主に令和5年4月1日から施行されています。

○「土地利用に関連する民法のルールの見直し」とは?

 所有者不明土地問題は、共有状態にある不動産の利用や管理、さらには遺産分割が困難になるなど、民法のルールが現代の状況に合わなくなっていることを浮き彫りにしました。こうした問題に対応するため、土地利用の円滑化を目指し、民法の相隣関係や遺産分割に関するルールが大きく見直されました。
具体的な見直し内容を見ていきましょう。

  1. 長期間経過後の遺産分割のルール(遺産分割に関する新たなルールの導入)
      相続が発生しても遺産分割が長期間放置されると、相続が繰り返され、多数の相続人による共有状態となり、管理や処分が非常に困難になるという問題がありました。また、具体的な相続分に関する証拠が失われ、遺産分割が難しくなるケースも指摘されていました。
      この問題に対応するため、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、原則として、生前贈与や療養看護等の特別の寄与などを考慮せず、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うこととされました。これにより、長期間放置された遺産分割の解消が促進されることが期待されています。
      ポイント: 相続開始から10年経過後の遺産分割は、原則として「具体的相続分」を考慮せず、法定相続分または指定相続分で画一的に行われる。
      この新しいルールは、改正法の施行日(令和5年4月1日)より前に開始した相続にも適用されますが、施行時から5年間の猶予期間が設けられています。つまり、令和10年3月31日までは具体的な相続分を考慮した分割が可能です。早めの遺産分割が重要になります。
  2. 隣地使用権のルールの見直し
      隣地の所有者やその所在が不明な場合、境界調査や越境してきている竹木の枝の切取りなどのために隣地を一時的に使用したいと思っても、同意を得ることができず、土地の円滑な利活用が困難になることがありました。
      この見直しにより、境界調査や越境した竹木の枝の切取りなどのために、一時的に隣地を使用できることが明確化されました。さらに、隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合にも、隣地を使用できる仕組みが設けられています。これにより、土地の円滑・適正な使用が可能になります。
  3. ライフラインの設備の設置・使用権のルールの整備
      自分の土地に電気、ガス、水道などのライフラインを引き込む際に、他人の土地を横断して導管などを設置したり、他人の所有する設備を使用したりする権利があることが明確にされました。また、その設置や使用のためのルール(事前の通知や費用負担など)も整備されました。これにより、土地の有効活用がしやすくなります。
  4. 越境した竹木の枝の切取りのルールの見直し
      隣地から竹木の枝が越境してきている場合、これまでは所有者に切除を求めても対応してもらえない場合や、所有者が不明な場合には、自ら枝を切ることができませんでした。
      今回の見直しで、催促しても越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその所在を調査しても分からない場合などには、越境された土地の所有者が自らその枝を切り取ることができる仕組みが整備されました。これで、わざわざ裁判手続きをしなくても、枝の切除が可能になり、土地の円滑な利用が促進されます。

 これらの民法のルール見直しは、所有者不明土地問題の根本的な解決と、土地の有効活用を促すための重要な一歩です。ご自身の土地や隣地との関係で困りごとがある方は、ぜひこれらの新制度の活用をご検討ください。

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