【速報】成年後見制度、利用者本位へ大転換か? 法制審が示す「途中でやめる」「交代できる」未来

 皆さんは「成年後見制度」をご存知でしょうか? 認知症などでご自身の財産管理が難しくなった方を法的に支援するための大切な仕組みです。しかし、「利用しにくい」という声や、「一度始めたら原則として亡くなるまでやめられない」という現状の課題も指摘されていました。
 そんな成年後見制度が、今まさに大きな変革期を迎えています。今月(令和7年6月)、法務省の諮問機関である法制審議会が、制度をより利用しやすく、利用者本位の形にするための中間試案をまとめました。今回は、この中間試案の注目すべき内容と、それが私たちの社会にどのような影響を与えるのかを深掘りしていきます。

●なぜ今、成年後見制度の見直しが必要なのか?
 現在の成年後見制度は、去年末時点でおよそ25万人が利用しています。しかし、法務省は高齢化の進展に伴い、必要としている人はさらに多いと見ています。にもかかわらず、制度の利用が進まない背景には、いくつかの使いにくさが指摘されていました。
 主な課題は以下の点です:

 •利用期間の硬直性: 「いったん利用を始めると、原則として被後見人が亡くなるまで継続される」という仕組みが、利用をためらう大きな要因とされていました。例えば、遺産分割などの特定の目的が解決しても、本人の判断能力が回復しない限り、制度の利用を終了できないという問題がありました。
 •自己決定権の制限: 成年後見人には包括的な取消権や代理権があり、本人の自己決定が必要以上に制限される場合があるという指摘がありました。
 •後見人の交代の難しさ: 本人の状況の変化や、後見人との相性が合わないといった場合に、後見人の交代が実現せず、本人がそのニーズに合った保護を受けられないという課題も指摘されていました。

 これらの課題を踏まえ、高齢化の進展といった社会情勢に鑑み、利用者である本人の尊厳にふさわしい生活の継続や権利利益の擁護をより一層図るため、見直しが行われています。

●中間試案の主な内容:3つの大きな変更点
  今回の法制審議会の中間試案には、これらの課題を解決するための重要な提案が盛り込まれています。

1. 利用期間の柔軟化
 途中でやめる、期間を定める 最も注目されるのが、現行の「原則、被後見人が亡くなるまで継続」という仕組みを改め、支援が終わり必要がなくなったときに途中で利用をやめることを可能にする案です。具体的には、以下の2つの方法が検討されています:
 【乙2案】定期的な報告義務と終了
   保護者(※)に対し、法定後見の要件の有無について定期的な報告を義務づけ、その報告や家庭裁判所の調査の結果、要件が存在しないと認められる場合には、申立てまたは職権で保護の開始審判等を取り消す(終了させる)というものです。
 【乙1案】あらかじめ期間を定める
   利用開始段階で裁判所の認定を受け、あらかじめ利用期間を定めておく案も併記されています。この場合、家庭裁判所は、代理権付与の審判や保護者選任の審判などにおいて期間を定めなければなりません。保護者は期間満了前に更新の要否を報告し、請求権者は更新を求める申立てができます。

2. 後見人の交代制度の導入
 被後見人やその家族が、後見人と合わないと感じた場合などに、後見人を交代できる仕組みを設ける案も示されています。 現行法にも解任事由(不正な行為、著しい不行跡など)はありますが、これに加え、「本人の利益のために特に必要がある場合」を念頭に、新たな解任事由の規定を設けることが検討されています。これにより、より利用者本位の選択が可能になります。

3. 保護者の職務・義務の見直し
 本人の意思尊重の明確化 保護者がその事務を行うにあたって、本人の意思を尊重する内容を明確にすることが検討されています。 例えば、保護者は、本人の心身の状態を考慮した上で、本人に対し、その事務の処理状況やその他必要な情報を提供し、本人の意思を把握するよう努めなければならないことを明確にする、という点です。 また、保護者が取消権を行使する場合には本人の意思を尊重しなければならないことを明確にすることも検討されています。 (なお、「意思」という用語についても、真意、意向、選好など、より適切な表現があれば見直しを含めて検討すべきとの考え方があります。)

 ※中間試案では、見直し後の制度で「成年後見人、保佐人又は補助人」に相当する立場を「保護者」、「後見、保佐又は補助」に相当するものを「保護」という仮称で呼んでいますが、これらは確定したものではなく、「支援人」や「支援」といった用語も検討されています。)

次回は、検討されたが見送られた事項、および、この中間試案の内容が法改正として実現した場合、成年後見制度にどのような影響を与えると考えられるかについて、解説させて頂きますね。

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