自筆証書遺言を書く際の注意点:あなたの「最後のメッセージ」を確実に伝えるために
遺言書は、ご自身の財産の分配方法や大切な方への思いを法的に伝えるための重要な文書です。特に「自筆証書遺言」は、手軽に作成できる一方で、いくつかの注意点を守らないと、せっかくの遺言が無効になってしまう可能性があります。この記事では、自筆証書遺言を作成する際の重要なポイントと、そのリスクを避けるための方法について解説します。
●自筆証書遺言のメリットとデメリット
○メリット
•手軽に作成できる: ご自身だけで作成できるため、最も手軽な方法です。
•費用がかからない: 作成費用がほとんどかかりません。
•内容を秘密にできる: 遺言の内容を他者に知られずに作成・保管できます。
○デメリット・リスク
•書き方不備のリスク: ご自身で書くため、法的な要件を満たさずに無効になる危険性があります。
•意思の立証が困難: 本人の意思で作成したことを立証することが難しい場合があります。
•検認手続きが必要: 遺言執行に時間がかかる「家庭裁判所の検認」が必要です。
•紛失・偽造・変造・廃棄のリスク: ご自身で保管するため、紛失したり、内容を書き換えられたり、破棄されたりする危険性があります。
●自筆証書遺言の作成ルール
自筆証書遺言には、法律で定められた厳格なルールがあり、これらを守らないと法的効力を持たなくなってしまいます。
1.全文の自書と押印:
遺言書の本文(全文)、作成日付、遺言者氏名は、必ずご自身で手書きし、押印する必要があります。
これは非常に重要で、たとえ「付言事項」(家族へのメッセージなど)であっても、本文に該当する内容はパソコン等で作成すると無効になります。必ず手書きしてください。
本文が記載されている用紙の余白に、パソコンで作成した財産目録等を印刷することも認められていません。
2.日付の特定:
遺言の作成日付は、日付が特定できるよう正確に記載しなければなりません。
例えば、「令和6年11月吉日」のような記載は、具体的な日付が特定できないため無効です。
3.財産目録の特例:
財産目録については、自書でなくても良いとされています。
パソコンで作成したり、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーを添付する方法で作成することが可能です。
ただし、この場合でも、その目録の全てのページに署名・押印が必要です。
財産目録を本文とは別の用紙で作成する必要があります。
4.訂正・追加の方法:
書き間違えの訂正や内容の追加を行う場合は、その場所を明確に示した上で、「3字削除3字追加」のように訂正または追加した旨を付記し、署名し、かつ訂正または追加した箇所に押印しなければなりません。
これらの手順が漏れると、訂正が無効となる可能性があります。
5.筆記具の選択:
長期間保存するため、消えるインクではなく、ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用してください。
6.氏名の表記:
遺言者の氏名は、ペンネーム等ではなく、戸籍通りの氏名(外国籍の方は公的書類記載の通り)を記載してください。
(※民法上は本人を特定できればペンネームでも問題ないとされていますが、確実性を期すためとされています。)
次回は、自筆証書遺言のデメリットを解消し、より安全に遺言を残すために、2020年からスタートした、「自筆証書遺言書保管制度」についてご紹介します。