永代供養墓と約款(その3)

 前回、永代供養墓の約款に、「本規約は当山住職の判断により改正される。」と書いてあっても、消費者の利益を一方的に害するものを無効とする消費者契約法第10条に該当する虞がある点で注意が必要である旨を説明させて頂きました。今回はその続きです。
 約款の内容を、将来、永代供養墓の経営者が一方的に変更できるようにするのであれば、民法548条の4(定型約款の変更)に沿った準備が必要です。

【ご参考】民法第548条の4(定型約款の変更)1項
1.定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

 つまり、永代供養墓の約款が定型約款であって、かつ、上記一、二のいずれかに該当していれば、相手方との合意なしに変更する事ができます。
 まず、約款が「定型約款」である必要がありますが、この部分については、また、別の投稿で説明したいと思います。
 次に、「一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。」とは、例えば、”契約後3か月以内で、かつまだ納骨をしていない場合、申込者が契約を解除した際には、払込金の八割を返金する”としていた条項を、単に”まだ納骨をしていない場合”に改める場合などです。
 しかし、実際に生じる可能性が高い変更は、このような相手方の一般の利益に適合するとは言えない場合の方でしょう。このような場合は、上記二にあるような要件を満たしている必要があります。どのような場合にこの要件を満たしていると言えるかは、個別具体的な事例により異なる事となりますが、少なくとも約款作成の段階で、この要件を満たしやすいように変更の手順を踏む事が望まれます。手順に関しては同条2項3項に定めがあります。それらに依って具体的に準備できるのは、
1)約款の中に、”将来この約款は、経営者によって、契約をした目的に反せず、かつ、相当の範囲で変更される可能性がある」旨を謳っておく。
2)同じく約款の中に、当該変更に際しては、”変更の内容と効果発生時期を、〇〇の手段により周知する”旨も謳っておく。〇〇は、各寺院等の規則で定められている公告の方法と一致させておくと良いでしょう。
3)当然ながら、変更に際しては、1)2)に従った内容、手続きに則って行い、周知の実施状況についても記録をとっておく。

という対応が考えられます。

【ご参考】民法第548条の4(定型約款の変更)2項、3項
2.定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3.第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

 まとめると、永代供養墓の約款の変更は、利用者の一般的な利益に合致する内容ならば勿論、そうでなくとも、契約目的に反しない内容で相当な範囲であれば、一方的に行うことができる。ただし、変更の可能性やその場合の周知方法について、約款に予め謳っておく方が、変更を認める民法の要件を充足し易くする意味で望ましい、となります。
 なお、冒頭で例示した「本規約は当山住職の判断により改正される。」も、変更の可能性を示す意味では約款にあって無意味ではありません。ただし繰り返しになりますが、それでも改正できる内容と手順については、ここで述べてきたような一定の制約があります。また、そもそも永代供養墓の約款の変更は、法人として行うものですから、「当山住職の判断」で行う事ができるのかは疑問が残ります。法人として規則に定められた責任役員会等の決定機関での決定を以て、法人の判断として行うべきものでしょう。

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