連絡がとれなくなった檀家様

 私が住職を務める明王寺では、年に数回は全檀家様への配布物があります。重要なお知らせや定期発行している「お寺便り」などです。できるだけ直接お届けするようにしていますが、一部は郵送せざるを得ません。その郵送物がこれまで数度、宛先不明で帰ってきた事があります。今度は電話をしてみますが、電話もつながらなくなっています。さて困りました、、、、
 このような体験をされる御寺院は決して少なくないと思います。放置していると、その檀家さんが境内にお持ちのお墓はお参りになる方もなく荒れてゆき、昨今、社会問題となっている無縁墓となっていきます。このような場合、どうすれば良いのでしょうか?
 この問題に対処するためには、大きく2つの対応が必要です。一つめには、何とか行方しらずとなった檀家さんを探し出す努力をする事、二つめは、それでも連絡がとれなかった場合に、そのお墓を終って、御遺骨を境内の合祀墓塔に改葬する事です。今日は、一つめの点についてお話したいと思います。
 転居してしまった方の現在のお住まいは、その方の住民票の写し(場合によっては住民票の除票の写し)を入手する事で確認できます。勿論、住民票の写しは本人か、本人から委任を受けた人しか発行してもらう事ができません。ただし、住民基本台帳法第12条の3の規定(後記)を根拠に、発行してもらえる可能性があります。この場合であれば、「相当期間に渡って、収めるべき護持会費等が納められていないという債務があり、このままでは、その方のお墓を無縁墓として改葬せざるを得なくなる」という事情が、この法律の規定に適合すると認めてもらえる可能性が高いという事です。実際、私も当山の檀家様について3回、請求をした事がありますが、3回とも、住民票の写しを発行してもらう事ができ、無事、その檀家様と連絡をとる事ができました。ただし、当然ながら役所で、このような事情を説明するためには、客観性のある証拠を提示して、「他人の住民票」の写しを発行してもらう正当な理由を詳らかにしなければなりません。具体的には、宗教法人側に何であれば提示できるか、役所側がどこまで求めるかの双方の事情により一様ではありません。お困りでしたらご相談できると思いますので、ご連絡下さい。
 なお、連絡がつかない期間が長くなると、転居が複数回に渡り、現住所にたどり着くまで、時間も労力もより多く要する事態となったり、せっかく住所がわかっても既にお亡くなりになっていたり認知症を発症されていたりする事もあります。そもそも、宗教法人を支えて下さる檀信徒様なのですから、定期的に連絡をとって日頃の護持に感謝申し上げる事を励行する事で、このような悲しい事態が生じないよう努めたいものです。また、入手した檀家様の住民票の写しは、最新の注意を以て取り扱う必要があるのは言うまでもありません。
 次回は、対処の2点目、合祀墓への改葬についてお話したいと思います。

【参考】住民基本台帳法第12条の3
 市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項(第7条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第7項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
三 前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者

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