宗教法人と「登記」

●登記は何のためにあるのか?
 私は、明王寺の住職となるべく、50才を過ぎてから専門道場に掛搭しましたが、その際には、下着から鉛筆1本にまで、全て名前を書いて自分のものである事がわかるようにしました。「持ち物全てに名前を書くなんて、中学の修学旅行以来だな。」と思いながら、これから家族と別れて集団生活に入る事を改めて覚悟した事を良く覚えております。
 さて、鉛筆1本について誰のものであるのか表示するためには、現物に名前を書けば良いのですが、「この境内の土地は誰のものか?」「このお寺の代表役員はどこの誰か?」となると、そうはいきません。土地に所有者を示す看板を建てれば、代表役員の肩書を持った名刺を持っていれば、恐らくその通りであろうとは推定できますが、例えば、大きな契約をする場合に、看板や名刺を信じてくれでは、相手は怖くて取引できません。
 そこで活躍するのが「登記」です。登記は、物や事柄に関する権利や義務について、社会に広く示すための行政上の制度です。お寺のご住職など、宗教法人の代表役員をされている方であれば、就任直後に法務局に出向いて、多くの書類と共に「宗教法人変更登記」をされたご記憶があるのではないでしょうか? その時には、何となく「住職変更をお上に報告しなけれならないから」と思って手続きされたかも知れませんが、登記の重要な目的は、この宗教法人の代表役員が誰であるのか、公に表示してもらう事にあります。ですので、登記された内容は「登記事項証明書」という書面になって、他人に確認してもらえる状態となる事が基本です。

●宗教法人に関係の深い登記とは?
 1)法人登記
    まず、何といっても、宗教法人としての法人登記があります。名称、住所、代表役員、包括団体(本山)がある場合はその団体などの基本情報を登記します。
 2)不動産登記
    法人の土地や建物に関する情報です。地番(住所のようなものです)、建物番号、面積、地目や所有者などの事項を登記します。

●登記を怠ると?
  登記には法律で必ず行わないといけないものと、義務とはされていないものがあります。上記の法人登記は必ず行わなければなりません。登記されている内容に変更があった場合(上述の代表役員の変更など)は、必ず変更登記も必要です。不動産登記については、一部任意の部分があります。ただし任意の部分についても、登記を怠ると、本来防げたはずのトラブルが発生する危険があるため注意が必要です。例えば、「ここはお寺の土地である」旨の登記がない場合に、誰かが、その土地を住職から「ここは住職個人の土地だ」と言われ、それを過失なく信じて土地を購入した場合などです。

●登記はどうやってする?
  登記は、法務局に必要書類を提出する事で行います。上述の代表役員就任の際の登記を経験された方ならおわかり頂けると思いますが、「今日から私が住職になりました。」と言っても登記官は取り合ってくれません。緻密にその内容を裏付ける資料を提出するように要求されます。行政上の制度として、公に示すのですから、当然の事ですね。必要な書類は一様ではありませんから、基本的には具体的な事案ごとに法務局に照会する事となります。
  宗教法人が行う登記は、頑張れば代表役員さんがご自分でできるものが殆どであると思います。手に負えない場合は、登記の専門家である司法書士さんにお願いする事ができます。最初の相談は行政書士の私でも誠意を持って対応させて頂きますが、登記自体は信頼できる司法書士さんをご紹介させて頂く形になります。

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