連絡がとれなくなった檀家様(その2)

 前回の投稿では、転居により連絡がとれなくなった檀信徒様を探す点についてご説明しました。今回は、それでも探し出せなかった檀家様のお墓を止むを得ず終って、境内の合祀墓に改葬する場合について書いてみます。
 改葬する場合に、大きくは2つの対応が必要です。「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」に基づき必要となる手続きと、墓地の使用権を持っていらっしゃる方(つまり行方知らずの檀信徒様)の権利を不当に害する事を防ぐために必要なその他の手続きです。

●「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」に基づき必要となる手続き
 1)お墓に立札を立てる。
    死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を公示する。
 2)立札と同じ内容を、官報に掲載する。
 3)1)及び2)から1年を経過しても申出がない事を確認した時点で、市町村長に改葬許可を申請する。

●墓地の使用権を持っていらっしゃる方の権利を不当に害する事を防ぐために必要なその他の手続き
  上記施行規則上の手順をきちんと踏んでいたとしても、檀信徒さんの墓地の使用権、墓石の所有権を不当に害したり、合祀により御遺骨を返却不能な状態にする事には、きわめて慎重であるべきです。
 1)まずは、檀信徒様とこれらの点についてきちんと定めのある墓地使用契約書を取り交わしておく事が必要です。
 2)古くからの檀信徒様で、これらの使用契約書が存在しない状態で無縁化している場合は、個別の事情に応じて、慎重に進める必要があります。一般論としては
   ・前回ご説明した、転居先の追跡調査をし、その方が亡くなっていた場合でも、縁故者と連絡をとる試みを尽くす。
   ・日頃からお墓の様子を見守り、お参りに来られている様子がないかを注意深く確認する。
   ・やむを得ず、改葬した場合も、一定期間は合祀せず、個別で保管しておく。
   と言った取り組みが必要と考えられます。
 
 上記の必要手続きから明らかなように、無縁墓の改葬は少なくとも1年間の公示期間が必要ですので、計画的に行う必要があります。公告にも実際の撤去にも、当然ながらそれなりの費用も要します。

 いずれにしても、これまでずっと供養を続けてきた宗教者にとって、お墓の無縁化も改葬も、辛い事です。上記のような最低限の手順を踏む以外にも、できるだけの事はしておきたいものです。小生が住職を務める明王寺では近年、一度だけ無縁化しそうなお墓がありましたが、上記のような無味乾燥な公告を立札で出す前に、数年間、「このお墓にご縁のある方は、至急寺務所までお声がけ下さい。」と掲示を出しておきました。数年後には「このお墓にご縁のある方に、このお墓の今後について、至急お伝えしたい事がございます。至急寺務所までご連絡下さい。」と、掲示を変えました。また、お届けのあった転居前の住所に赴いて、近所の方に転居先を知らないか、お墓の写真を見せて聞いてみたりましました。これら取り組みもいずれも不調で「いよいよ公告か」と決心しましたが、幸い、縁故者からのご連絡を頂けたので、改葬には至りませんでした。

 上位のような無縁墓の改葬でお悩みでしたら、小職までご連絡下さいませ。宗教者の視点を持った行政書士として、ご相談させて頂きます。

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