永代供養墓と約款(その2)
前回に引き続き、永代供養墓・納骨堂の契約約款についてのお話を致します。ネット検索で閲覧できる各御寺院の約款の中に、以下のような条項が見られるものがあります。
「本規約は当山住職の判断により改正される。」
果たして、このような規定は有効でしょうか?
何といっても「永代」の契約です。寺院が長年の供養を続けるうちには、境内の再構築の過程で供養墓が建替えられたり、位置が変わったり、習俗の変化と共に供養として行われる読経の機会が増減したり形式が変化する事が想定されます。今から50年前に、コロナ禍の法要がZoomで執り行われる事態を予想していた人は、果たしていらっしゃるでしょうか? そのような事を考えると、永代供養の具体的中身の変容について、寺院側の裁量の余地を残しておきたいという思いは良くわかります。
しかしこのような条項を根拠に、契約の本質的な重要な部分を一方的に変更すると、民法の信義則、消費者契約法の無効条項に照らして、問題となる可能性があります。消費者契約法第10条は、消費者の利益を一方的に害するものは、無効としています。法律行為における「無効」とは、「初めからなかった」ことを意味します。考えてみれば、33回忌法要後に合祀する内容で契約を結んでも、後からお寺の都合で一方的に七回忌で合祀するように変更できるのであれば、そもそも契約を結ぶ意味がありません。このような規定が認められないのは、肌感覚としても理解できるものと思います。このように、「初めからなかった」条項を根拠に、契約で謳われた役務の内容を一方的に変更すると、御寺院が債務不履行、不法行為に基づく損害賠償の請求を受ける虞があるので注意が必要です。
では、寺院側の裁量の余地を残しておきたい内容は、どうすれば良いのでしょうか? この点については、次回またお話させて頂きたいと思います。
【ご参考】消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
【ご参考】民法第1条第2項(基本原則)
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。